いきなりですが、
「あなたは原子力発電に賛成ですか?反対ですか?」
これは、全世界の原子力発電を主軸にした電力供給を行っている国にとって大きな課題になっています。
なぜなら、地球温暖化の原因となる火力発電(化石エネルギーを燃やして発電する方法)から脱却するすることを迫られているからです。
火力発電から脱却する選択肢は原子力発電と再生可能エネルギーになるのですが、各国にはそれぞれ事情もあるようです。
今回は、2019年現在、どのくらいの割合で原子力発電をしているのか、割合の高い国TOP10(EIA調べ)について紹介したいと思います。
脱原発するのか?それとも原発を推進していくのか?発電率の推移や政策なども一緒にみていきましょう。
31位:日本
原子力発電比率:0.94%
過去、日本国内では54基の原子力発電所があり、国内電力発電量の30%を賄っていました。
EIA(U.S. Energy Information Administration:アメリカ合衆国エネルギー省)のデータによると、2016年の日本の原子力発電比率は1%未満でした!
20%~30%が原子力で発電がされていましたが、東日本大震災の際に起きた事故から、一気に減少し、2014年からは1%未満になっています。
震災以降、日本における原子力発電の在り方は大きく変わりました。
原子力発電の割合が激減した一方で、増加したのは化石エネルギーによる火力発電です。
グラフを見ると一目瞭然で、ほとんどが火力発電によって賄われていることが分かります。
再生可能エネルギーによる発電量も年々増えてはいるものの、総発電量全体で見ると11%と少ないですね。
10位:フィンランド
原子力発電比率:33.48%
フィンランドには、オルキルオト原子力発電所とロヴィーサ原子力発電所という2ヵ所の原子力発電所があります。
そして、総電力発電の30%以上が原子力発電によるものとなっています。
原子力発電が33%と最も多く、水力発電・再生可能エネルギー・火力発電がそれぞれ約20%という構成になっています。
2019年、建設中のオルキルオト原子力発電所3号機に、安全上問題ないとし運転認可が認められ2020年に運転開始が予想されています。
今回、運転許可が下りた理由は、
- 電力の供給保証
- CO2排出量抑制
- エネルギー輸入量削減
といったことに応えるため。
ちなみに、ここ数年で原子力発電の発電は右肩上がりで伸びています。
この背景には、フィンランドでは「2030年までに燃料として石炭を燃やすことを禁止する」目標が掲げられていることがあります。
脱・化石エネルギーを図る中で、原子力発電への切り替えも余儀なくされているのでしょう。
9位 スイス
原子力発電比率:34.41 %
スイスは化石燃料に恵まれていないため、1970年代までは水力発電が90%を占めていました。
それ以降、増えた電力需要量は原発によって賄われ、2016年には34.41%の発電がされています。
水力発電が主力になって発電されており、火力発電は1.44%とごくわずかなのが特徴です。
スイスには原子力発電所が4ヵ所5基あり、福島原発の影響から2011年5月には新規の原発建設停止が決定されています。
また、「新エネルギー法」が国民投票で可決され、2050年までに
- 原子力から撤退
- エネルギー削減
- 再生可能エネルギーの利用の促進
といったことが掲げられています。
一方で、2018年3月には補修のため3年間稼動停止していた世界最古の原発、ベツナウ第1原子力発電所の再稼動も発表されています。
過去の発電率と比較しても、近年はその割合も減少しています。
今後、原発の再稼動などがありますが、2050年を目標とする脱原発で段階的に減少していくと思われます。
8位 スロベニア
原子力発電比率:35.14%
スロベニアでは製造業が盛んで、経済成長を続けていますが電力需要も増加しているようです。
そんなスロベニアの原子力発電比率は35.14%でした。
総発電量比率では、原子力が35%と最も多いですが、水力発電、火力発電も約30%と3つが主力となっています。
1990年以降は30%以上の発電が続いているのが分かります。
スロベニアにとって原子力発電は、経験から信頼できる電力供給源であり、気候変動に対応できるエネルギー源として重要なものとしています。
1984年に運転が開始した原発(クロアチアと共同運転)は、運転期間は2023年までとされていますが、更に20年延長を検討しているとのこと。
段階的に化石エネルギーによる発電の廃止、低・脱炭素への取り組みをしていくとしていますが、将来の原子力発電排除は考えていないようです。
7位 ブルガリア
原子力発電比率:35.67%
ブルガリアでは1970年代から1993年までにコズロドイ原子力発電所で計6基が運転開始されました。
その流れもあり、ブルガリア国内の電力発電は原子力発電が重要な発電源になっています。
ピーク時には50%近くも発電がされていましたが、減少傾向にあります。
しかし、近年また上昇しているのには、ある電力供給の問題があるからです。
発電比率を見ると、化石エネルギーによる火力発電を中心に発電が行なわれ、約35%が原子力発電です。
原子力発電については、28年前に中止になっていたベレネ原子力発電所の計画が再び始動することになったことが2018年に公式で発表されました。
中止になっていたのは、資金調達が難航していたためで、脱原発に向けたものではありません。
そのため、原子力発電の利用と維持、そして拡大するという意向は変わっていないと見られています。
ブルガリアは伝統的にバルカン地域の電力輸出国なので、発電設備容量が減ってしまうと、地域全体に影響が及んでしまうそうです。
実際、ブルガリアの原子力拡大計画が進んでいなかった間、供給力不足で電力輸出が一時停止される事態に。
ベレネ原子力発電所計画が再び動き出したのも、ブルガリア一国だけの問題ではなく、バルカン地域全体への電力供給も大きな要因だともとれます。
現在の主力は石炭による火力発電ですが、世界的にCO2削減の動きがあるため老朽化した石炭火力のプラントは閉鎖へ向かうとされています。
今後、電力供給の確保と低炭素化を両立するため、原子力設備量の回復と拡大が欠かせないというのがブルガリアの認識になっているようです。
6位 スウェーデン
原子力発電比率:39.67%
スウェーデンは化石燃料資源に乏しい一方で、豊富な水力資源と原子力が中心となって発電されています。
また国土は森林地帯に広がる特性もあり、バイオマス発電などの再生可能エネルギーも盛んです。
火力発電は1.27%とごくわずかで、水力と原子力が40%であり、この2種類の電源がほとんどを占めていますよね。
スウェーデンでは、米国スリーマイル島原子力発電所の事故から、2010年までに原子炉を廃炉することを決定していましたが、進展はしませんでした。
1990年代から比較すると減少している傾向があり、2040年までに再生可能エネルギー100%とする目標を定められています。
しかし、脱原発しての100%ではなく、原子力発電を含めた再生可能エネルギーとされているようです。
5位 ウクライナ
原子力発電比率:49.55%
1986年のチェルノブイリ事故直後に、新規原子力発電所の建設が中断されてたウクライナ。
ですが、国内の電力不足によって1993年に建設延期を撤回。
現在では、ウクライナの電力発電は、原子力発電と火力発電が中心となっています。
総発電量の約50%を賄う商業炉15基のうち、経年化した11基を順次、運転期間の延長手続を進めているようです。
右肩上がりで伸びていて、1992年と比較すると約2倍になっています。
2017年に発表された2035年までの目標では、
総発電量のうち、
- 原子力発電 50%
- 再生可能エネルギー 25%
- 水力発電 13%、
- 化石燃料火力 12%
で賄うと規定しています。
再生可能エネルギーの拡大で、国内最大規模の太陽光発電所や風力発電所の導入も進められています。
2035年にはこのグラフの割合とは大きく変わりそうですね。
4位 ハンガリー
原子力発電比率:50.23%
ハンガリー唯一の原子力発電所「パクシュ原子力発電所」では、4機の原子炉によって国内発電量の50.23%が生産されています。
しかし、このパクシュ原子力発電の4基は2032年以降には1~4号機の運転停止がに迫っています。
2000年の原子力発電の割合と比較すると約10%増えていることもわかります。
経済成長に伴い、電力消費量が今後も伸びると予想される一方で、原子力発電所の寿命が迫っているため、電力供給不足が心配されています。
新たな供給力としてパクシュ原子力発電所5、6号機の建設が決定しているのですが、ロシア企業の建設が進んでおらず運用時期が遅れているようです。
また、最終エネルギー消費において、再生可能エネルギーを2020年までに14.56%と引き上げる目標が示されています。
ハンガリージェール市で運営している高級車メーカー「Audi」の物流拠点では、2019年8月にメガソーラーを建設し、2020年に運転開始が予定しています。
ハンガリーでは、企業も含めた取り組みで再生可能エネルギーによる発電が増えていきそうです。
3位 ベルギー
原子力発電比率:51.90 %
原子力発電が約52%を占めるベルギーでは、商業炉全7基を2025年までに全廃する脱原子力政策が進められています。
しかし、国内での電力需要が増加しているため、脱原子力は非現実的になってきていると言われています。
2016年のデータでは、ベルギーにとって原子力発電が重要な電力源になっていることが分かります。
60%を超えていた頃に比べると10%ほど減少しています。
現在も脱原子力政策のために、代替電源として風力発電など再生可能エネルギーの導入も積極的に行なわれています。
一方で2019年2月の報道では、2025年までの閉鎖が決定しているベルギー国内7基の原子炉の運転延長も想定されているようです。
2位 スロバキア
原子力発電比率:54.25%
2016年のデータでは54.25%で、世界で2番目に多い国です。
スロバキアでは昔から原子力発電が盛んに行なわれています。
スロバキアでは、主に2000年代に入ってから原子力発電が50%以上を占めています。
原子力発電所については、モホフチェ原子力発電所3号機で段階的に機能試験が実施されていて、2019年には運開予定とされています。
また、同4号機も現在建設中で、続けて運開予定があるようなので、さらに原子力発電量が増えそうです。
1位 フランス
原子力発電比率:73.04%
電力のほとんどが原子力発電のフランス。
昔から原子力発電大国で、昔から原子力発電の割合は世界でトップになっています。
2016年も原子力発電率は73.04%と圧倒的です。
電力総発電量529.11TWhのうち、原子力発電量386.45TWhを発電。
火力発電・水力発電・再生可能エネルギーはそれぞれ10%前後ですね。
2015年に制定された「エネルギー移行法」で“2025年までに原子力発電比率を50%に低減”という目標がありました。
2019年1月に政府が発表した目標では10年延ばした「2035年」にする法案が提出されたそうです。
また、2035年までに原発依存度を50%まで引き下げる目標がありますが、脱原発へ向けたものではないようです。
今後も「電気料金を安く提供するために稼動は継続する」ということを現フランス大統領は明らかにしています。
合わせて読むと、より深く理解できる記事はコチラ
まとめ『地球温暖化のため、火力発電廃止から原発再稼働の流れもある』
世界で原子力発電量の割合が多い国を見てきましたが、脱原発に向けて進んでいる国もあれば、政治的な理由で原子力発電に頼らなければいけない国もありました。
日本は原子力発電を20%以上削減しましたが、その代わりに石炭、天然ガスなどの化石エネルギーに頼ってしまっており、世界の流れと逆行してしまっているという問題もあります。
2010年までは原子力発電がもっとも近代的なエネルギーでしたが、現在は「再生可能絵エネルギー」こそ最も未来的で近代的なエネルギーと言えるでしょう。
日本は原子力発電に注いでいた開発費を再生可能エネルギーの開発に移行してほしいですね。
https://www.globalnote.jp/post-3733.html
競争力を失う原子力発電 世界各国で自然エネルギーが優位に|自然エネルギー財団
https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/190123_NuclearReport_JP.pdf
【ブルガリア】ベレネ原子力発電所計画の再始動、欧州における「再エネ+原子力」の現実的な選択
https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/__icsFiles/afieldfile/2019/06/13/20190613.pdf
世界最古のスイスの原発が再稼動へ|swissinfo.ch
https://www.swissinfo.ch/jpn/
2018年(暦年)の国内の自然エネルギー電力の割合(速報)|isep
コメント